- もしもアインシュタインが翻訳家だったら 〈第III部〉情報量が翻訳の宇宙を支配する (夢叶舎)
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前に「危険ですから」が全体として、for your safety に対応すると書きました。これは「窓から手や顔を出さないでください」の前提となるもので、背景と言い換えることもできます。
それが、原子 campon です。
時間、空間、原因、理由、手段など、何らかの文を導くための背景となるものです。
ここで、翻訳を考えるにあたって、二つの言語間で品詞は対応しないが、情報子は対応するという命題を考えていきましょう。
血圧が高いと実にさまざまな病気(疾患)の原因となる。
High blood pressure may cause a wide variety of diseases.
日本語は「血圧が高いと」が原子 campon になっていて、見えない主語(名子)があり、「さまざまな病気の原因となる」という動子があります。
一方、英語は一見、名子+動子+名子となっているように思えます。
それでは、情報子が対応しないことになります。
ところが、よく見ると、high blood pressure が無冠詞になっています。一般名詞が無冠詞のままでいると、その動きを完全に封じられておらず、「血圧が高いと」というような仮定の意味合いを残しています。そう考えれば、日本語と英語とは情報子が対応していることになります。医師がよくやるようにこの英文を「高い血圧は実にさまざまな病気の原因となる」は誤りです。
そもそも「高い血圧」はありえません。名詞の動きを封じたければ、高血圧 hypertension とする必要があります。専門用語は絶対概念なので、名詞に含まれている動きの要素が完全に封じられています。
Hypertension may cause a wide variety of diseases.
これなら、「高血圧は実にさまざまな病気の原因となる」となり、情報子が対応します。
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