出没情報と情報子

もしもアインシュタインが翻訳家だったら 〈第III部〉情報量が翻訳の宇宙を支配する (夢叶舎)
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 情報量理論の柱となるのは、出没情報と情報子です。


 出没情報とは、ある言語では文字の上に表すが、別の言語では文字の上に表さなくても明らかに読み取ることのできる情報のことを言います。


 たとえば、your father と「お父さん」、お父さんには「あなたの」という情報は文字にはしていませんが、相手に向かってお父さんと言えば、明らかに your のことです。一方、your father には文字の上で敬意を表す情報はありませんが、文脈から読み取れるはずです。
 「教師をしています」に主語はなくても、教師をしているのは本人であることがわかります。
 主語を言わないのはあいまいさの象徴ではなく、最小エネルギーの法則に基づくものです。主語を言わないとわからないとき、しかるべき人はみな主語を入れます。あいまいなのは、日本語ではなくその使い手であるにすぎません。


 この単語を訳していないとか、原文にない語を補っているとか、不当なそしりを受けるのは、この出没情報の考え方が浸透していないからです。この考えを自分のものにした翻訳者は実にのびのびと翻訳作業に打ち込むことができるようになりました。
 ただ、原文にある語をそのまま移さなくてもよいということは、何でも好き勝手にやってよいということではありません。


 そのために取るべき手続き、道順を示すのが情報量理論です。


 情報子については次回。
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